どんなに頑張っても、出版社は電子書籍の価格を防衛できない
もうだいぶ前に(Web2.0とか言ってた頃かな?)、「ネットで入手できるものは全て無料になる」と言ってた評論家がいて。その言説そのものは幼稚でとるに足らないものだったけど、個人的には「無料になる」のは避けられないだろうな、と思っていた。どう電子的な防衛策を講じてもそれは必ず破られる。電子的なものだから。電子的っていうのは要するに0か1かで書けるようなことしかできないのであって、0と1で書いたものはどこかの0を1に変える(あるいはその逆)だけで意味を変えられるから。しょうがないので、無料じゃ困る人たちは法律で罰則を作って、脅迫することで規制しようとする。これが現状ですね。電子技術的に阻止できないので、「アップロードは当然、ダウンロードもやった奴は犯罪者として罰する」っていうのが刑罰化、でいいんでしたっけ。まぁそれはいい。でも、アップロードもダウンロードも、やった奴を本当に正しく特定できますか? 先日大阪でIPアドレスを根拠に殺人予告した人間を逮捕したら、実はローカルPCがウイルス感染してて他人が操作できる状態になってて(=乗っ取られてて)、誤認と認めて釈放した件。あれ真犯人は特定できましたか? 違法化されたアップロード/ダウンロードをやる輩は、「違法であるがゆえに」やっているのが自分であると特定できないように隠ぺいしてやりますよ。今回の乗っ取りがそうであるように。当然。それを看破できる電子技術的な裏付けはありますか? 無いんじゃないですか? 無いんなら刑罰化は、「刑罰は怖いので止めておこうかな」っていう、脅迫に屈する普通の人々に対してのみ有効ですね? 最初から悪いと分かっててやる輩を止めることはできませんね? 最初から悪いと分かっててやる輩っていうのは、それで金を稼ごうとする輩だ。すなわちプロだ。プロを規制できないと刑罰化の意味は事実上無いんじゃないですか? 私はSEとして食ってきた。コンピュータのソフトウェアを作って食ってきた。よって、モノが何であるかに関わらず、著作権を無視したコピーをする輩は大嫌い。だから、刑罰化自体は反対じゃない。けど、現状の法律が規制として有効だとは思えない。卑劣な奴と思われるでしょうが、ここまで書いておいて「じゃあ具体的にどうすれば規制できるのか」という問いに対する答えは私は持ち合わせない。ごめんなさい。もともと電子的技術っていうのはそういうものなんだもの。「劣化無しにいくらでもコピーできます」って言うのは電子技術のうたい文句だもの。「優れた点」なんだもの。今はもう「厄介な点」と言われてるのかも知れないが。困りものだ。困りものだけど、人の道徳的信条に頼るしかない今の規制制度はやっぱりザルで、すなわち、いずれ事実上「無料になる」のは避けられないかも知れない、と思っている。どうしたらいいでしょうね。すみません。言いたいだけ言っておいて、解決案もなしで。